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レッツMEditQ COLUMN
2023.11.06
2023.11.06
なぜ、医学部で歴史を勉強するの? 【MEdit歴史授業のまとめ】
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◆なぜ歴史を勉強する必要があるの?

今年度、本格的スタートを切ったMEdit Labですが、MEdit授業を何度も行う機会がありました。特に、歴史について取り扱う授業が多かったのですが、なぜ、医学を学びたいと思っている高校生に歴史の話をするのか。文系科目に分類され、そもそも医学部を目指して勉強する受験生にとってはあえて学ばなくてもいい「歴史」。今回は、医学部進学を志す高校生に、なぜこんなにも歴史を学ぶ重要性を強調するか、改めてお話したいと思います。

──歴史は暗記の科目ではなく、「関係を発見する力」を身につけるもの

歴史は決して暗記科目ではありません。情報の関係を構造的にみる力を養うものです。新しい技術やサービスを生み出すには一見関係のないモノ同士の間に対角線を引く力が重要です。ゼロからアイディアを生み出すのではなく、既存の何かと何かを重ねて新しい価値を見出すのがイノベーションです。そのためには、既存の何かが思いがけず別の何かと関連があることに気づく力が必要になってきます。

医療ロボットを新しく考案するとしましょう。その時は、ロボット技術の歴史を紐解くようなタテの見方と、医療以外で現在、どのような分野でロボットが活用されているかヨコの見方を重ねて考察していくと新たな発見があります。先日、佐久長聖高校のイベントで講演された総合診療科教授の内藤先生も、COVID-19対策に関しては、東日本大震災の経験を生かしたでしょうし、同時期に行われている各国の感染対策についても研究されたことでしょう。

日々の診療においても、関係を発見する力は、つねに問われます。問診から患者さんの症状を細やかに聴取し、あわせて、患者さんの表情やしぐさなどにも注意を向ける。既往「歴」、家族「歴」を踏まえ、患者さんの身体の中で今、何が起こっているか、現病「歴」を分析していく。「病歴」を聴取するといいますが、まさに、医師の診断スキルにも歴史を学んで培うことのできる「関係発見力」が活きてくるのです。

──名づけることは歴史を編集するということ

歴史を通して、史実に名前がつくことの重要性に気づくこともできます。歴史はあらゆる出来事が名づけられることによって構成されています。さらに、名前には強い力があります。ひとに何かを考えさせたり、思い出させたり、連想する力があるのです。

例えば、私たちは、東日本大震災のことを大震災が起こった月日にちなんで「3.11」と呼んでいます。「3.11」はもはや私たちにとって、単なる数字の羅列や月日を表すにとどまりません。その言葉を聞いただけで津波や原発事故を含むあらゆる記憶が一斉に思い出されます。「三密」という密閉・密集・密接の3つの密を表す言葉は、2020年の冬に厚生労働省が掲げた標語ですが、まさに“流行”し、流行語大賞にもノミネートされましたね。

そもそも、私たちが考えることができるのは、物事に名前がついているからです。学習は、名前を覚えることからはじまります。名前を覚え、その使い方を知り実践していくことが、学ぶことのプロセスです。

病名によって、様々な病態とそれがもたらす症状をまとめて考察することができるようになります。診断は病名をつけることにほかなりませんが、医師は患者さんを治す前にいったん患者さんを病気にするわけです。名前があるからこそ、治療がはじめられるのです。

◆「病気に名前をつける」ワーク

MEdit授業では、歴史を学ぶことの重要性とその理由についてその都度、お話してきたわけですが、授業の最後に「病気に名前をつける」ワークに毎回取り組んでもらってきました。この名づけのワークでは、病気の特徴を一言でぎゅっと言い表すことのできる言葉を考えてもらいます。名づけの威力を知ってもらいながら、言葉のセンスも鍛えられるワークです。

これまでもコラムで紹介してきましたが、ここでは佐久長聖高校の生徒さんのユニークな回答をご覧に入れます。

Q.試験前になると別のことをしたくなる病気

──「テストウヒ病」by. アイスさん …テストと逃避の「ト」を重ねて「テストウヒ」。簡潔にして病気の特徴を過不足なく言い表していて、ネーミングセンス抜群です!

Q.「授業が始まると10分以内に眠くなる病気」

──「いつもは眠くないのに病」by. Kooooさん …「いつもは眠くないのに」という表現だけで、「授業に限って眠い」という状況がふわっと伝わってきますね!

Q.「スマホが手元にないと落ち着かなくなる病気」

──「すまほーるど」by. しまうまさん …わずかな単語に様々な意味を込めたその編集力に脱帽です!

これまでもたくさんの生徒さんが、病気の特徴をありありと表現するような病名を考えてくれました。歴史をテーマとしたMEdit授業を通して、歴史上の様々な出来事や身の回りにあるモノの名前の来歴に興味を持ってくれたらと思います。

診療は、患者さんの歴史をひもとくことでもあるのです。医療に興味を持った高校生のみなさんには、ぜひ、歴史的な見方≒関係を発見する力を身につけてもらいたいなぁと思っています。

おまけ1:「病名をつけるワーク」の内容はこちらもどうぞ

「スマホが手元にないと落ち着かなくなる病気」はこれまでのMEdit授業でも名回答がいっぱい出ています♪

城北高等学校にてMEdit授業「医学×歴史」開催! 高校生が名づけた病名発表!

「湘南白百合高校×順天堂大学」高大連携イベントでMEdit授業開催!

おまけ2:歴史に興味を持った方に絶対オススメのスペシャル年表があります。こちらから

松岡正剛監修『情報の歴史21』編集工学研究所・イシス編集学校

投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。