おしゃべり病理医のMEditラジオ COLUMN
MEditLabのポッドキャスト番組「てゆーか医学」の第10回放送は、「ゆるっとMEdit」、通称「ゆるメディ」をお届けします。今回のテーマは、QUIMの“心の大師匠”こと、みうらじゅんさん。
「マイブーム」「ゆるキャラ」の生みの親にして、自称「イラストレーターなど」。仏像、ロック、ネーミング、老い――あらゆるものを独自の視点で“面白がる”天才・みうらじゅん。その発想術と人生哲学を凝縮した『老いるショック大賞』(筑摩書房)を、おしゃべり病理医・小倉加奈子、編集者QUIM、“しんしん”こと發知詩織さんの3人で、ゆるっと語ります。
おしゃべりの内容は、
・”みうらじゅん”とは何者か? 「人生いりょいょ」ではなくて、「人生エロエロ」
・「マイブーム」「ゆるキャラ」の生みの親
・『ない仕事の作り方』――それまで世の中に「なかった仕事」を生み出す方法
・陽気に「老い~~るショック!!!」と、叫んで下さいね
・歳をとるって悪くないじゃん?
・病院のスリッパを履いたまま、家まで気づかず帰ってきた
などなど。
「老いるショック」「アウト老」「自分なくし」「一人電通」……。名前のない感覚に名前をつけ、世の中になかったものを生み出してきた、みうらじゅん流の発想法と生き方。笑いながら読んでいるはずなのに、いつの間にか「仕事とは?」「老いとは?」「自分とは?」まで考えてしまう回になりました。
それでは、ごゆるりとお楽しみください。
▼その他配信先
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・YouTube:https://youtu.be/LugicabIrXs
▼チャプター
・”みうらじゅん”とは何者か? 「人生いりょりょ」ではなくて、「人生エロエロ」
・「マイブーム」「ゆるキャラ」の生みの親
・『ない仕事の作り方』――それまで世の中に「なかった仕事」を生み出す方法
・陽気に「老い~~るショック!!!」と、叫んで下さいね
・歳をとるって悪くないじゃん?
・病院のスリッパを履いたまま、家まで気づかず帰ってきた
▼全文公開
●”みうらじゅん”とは何者か? 「人生いりょりょ」ではなくて、「人生エロエロ」
QUIM:
こんにちは。よろしくお願いします。今回もですね、“しんしん”こと發知詩織さんに同席していただいています。
しんしん:
はい、お邪魔します。よろしくお願いします。
小倉:
「ゆるっとMEdit」、今日こそ本当に“ゆるっと”でいきたいと思います(笑)。
QUIM:
前回は、『急に具合が悪くなる』(晶文社)と西加奈子さんの『くもをさがす』(河出文庫)を紹介したんですけど、ちょっとすみません。前回、「ゆるっとMEdit」がどういう企画か説明するのを忘れていました。「ゆるっとMEdit」は、小倉さんやしんしんや僕が、最近読んだ本とか映画とか、MEditLabの活動なんかを紹介するコーナーになっております。
前回は、闘病というか、がんにかかった当事者のお話の本を扱いました。本当にぜひ読んでいただきたい本でした。そして今回は、僕の尊敬する、心の中の大師匠――みうらじゅんさんの『老いるショック大賞』(筑摩書房)を紹介したいと思います。皆さん、みうらじゅんさん、ご存じですかね? 特に高校生くらいだと、あまり知らない方も多いかもしれない。
小倉:
私は、「ゆるキャラ」を世に広めた人として知っております。
QUIM:
まさしくその通りです。仏像マニアとしても有名ですね。
しんしん:
そうそう。私、ラジオのゲスト出演とかされているところで知りまして。そこから調べてみたら、なんだか変わったおじさま……という印象だったんですけど。
QUIM:
調べたら68歳(笑)。この風貌がね、ロン毛にサングラス。お髭はコロナ以降なんですけど、ロックも大好きで、サングラスはボブ・ディラン、ロン毛は吉田拓郎なんです。
1958年2月1日、京都市生まれ。たまに京都弁が出たりする。血液型AB型。プロフィール欄にはいつも「イラストレーターなど」って書いてあるんですよ。「など」って(笑)。いろいろやりすぎているから。もともとは漫画家としてデビューしていて、趣味がすごい。エロ本のスクラップブック作りがマイブームで、今700冊以上あるそうです。だから、みうらじゅんさん曰く、「人生の3分の2は、いやらしいことを考えてきた」。僕ら『人生いりょいりょ』ってやってますけど、みうらさんは『人生エロエロ』((文藝春秋)っていう本も出しているような、そういう方です。
小倉:
最高ですね(笑)。

#007 赤本なし、予備校なし、オールE判定で医学部受験!?(※決して真似しないで下さい)おしゃべり病理医・小倉加奈子②【人生いりょいりょ】
●「マイブーム」「ゆるキャラ」の生みの親
QUIM:
みうらじゅんさんのこと、皆さんに本当に知ってほしいんですけど、小倉さんがさっき言った「ゆるキャラ」とか、「マイブーム」とか、今では普通に使っている言葉だけど、これ、みうらじゅんさんが作った言葉なんですよ。驚くべきことに、「マイブーム」は1997年の新語・流行語大賞トップ10にも入っている。
しんしん:
マイブーム……私、97年だと6歳なので、もう普通の言葉として育ってるんですよね。
小倉:
そうなんですよね。ゆるキャラもそう。後から知ってびっくりしました。
QUIM:
この人のすごさって、ネーミングなんですよ。今回紹介する『老いるショック大賞』もそうなんですが、「老いるショック」って、もちろん「オイルショック」に掛けているんだけど、老いてしまった自分へのショックを、「老いるショック」と言い換える。
「老いたなぁ……」じゃなくて、「老いるショック!!」と言ってしまう。この感覚がいいんですよね。
あと、最近使っている言葉に「アウト老」(『アウト老のすすめ』文藝春秋)っていうのがあって。アウトローの“ロー”を“老”に掛けて、「老人らしく生きなくていい」「はみ出して生きよう」という意味。最近、耳鳴りがひどい時には、「耳鳴り」じゃなくて「耳ゼミ」って呼ぶらしいんです。「耳の中でセミが鳴いてるな」って思うと、耳鳴りじゃなくなる。これって、ちょっと医学にも関係ある気がしません?

小倉:
確かにそうですね。老年医学とか、そういうところにも通じる感じがします。
QUIM:
あと、仏教的な話も面白い。仏教って「空」とか「無我」とかありますよね。みうらさんは、「自分探し」じゃなくて「自分なくし」(『自分なくしの旅』幻冬舎)だって言うんです。自分なんて最初からないんだよ、って。
小倉:
ああ、確かに。「空」とか「無」とか、仏教ですね。
●『ない仕事の作り方』――それまで世の中に「なかった仕事」を生み出す方法
QUIM:
あと、仕事する人にとってすごく重要だと思うのが、「一人電通」。自分一人で、自分のブームを宣伝し続ける。これ、MEditLabにも大事だと思うんですよ。みうらじゅんさんって、牛ブームとか、いろんなマイブームがあるんです。牛のものをひたすら集める、とか。世の中では全然流行ってないんだけど、「これ、流行ってるよね」って前提で話し続けるんです。
しかも、自分のことを「雑誌タレ(雑誌タレント)」って言ってて雑誌にたくさん連載を持っているから、同じことをいろんな媒体に書くんです。読者は、いちいち「同じ人が書いている」と意識してない。
すると、「あれ? ここにも牛の話が書いてある」「こっちの雑誌にも牛って書いてある」……となって、「牛って流行ってるのかな?」って思い始める(笑)。
しんしん:
強い(笑)。
QUIM:
これ、ゲーム作りにも使えるじゃないですか。そういうセンスを、ぜひみうらじゅん先生から吸収してほしいなと思います。
小倉:
いずれドクターも、自分が病気を発見して、病名を考える時があるかもしれないしね。ネーミングの先輩として、学ぶところは多いですね。
QUIM:
まだまだ紹介したいんですけど、もし1冊だけ挙げるなら、『ない仕事の作り方』(文藝春秋)ですね。
小倉:
あ、それ、読んだことあります。
QUIM:
これは2021年の本屋大賞・発掘部門「超発掘本!」にも選ばれた本なんですが、みうらじゅんさんって、本当に「世の中にない仕事」を自分で作ってきた人なんです。そこには、やっぱりネーミングが関わっている。名前のないものに名前をつける。これって、企画にも、発想にも、ゲーム作りにも、全部つながってくると思うんですよね。

しんしん:
私、2023年に読んでます。
QUIM:
みうらじゅんさん、いやらしい話しかしてない人みたいに聞こえたかもしれませんけど(笑)、別にそういう本じゃないです。映画化作品もたくさんあるし。『アイデン&ティティ』っていう漫画は映画になっているし、『色即ぜねれいしょん』っていう小説も映画化されている。本当に超多彩な人なんです。
しんしん:
私が思っていた以上に、すごい方でした。
●陽気に「老い~~るショック!!!」と、叫んで下さいね
QUIM:
そして、これだけは紹介したくて。いよいよ『老いるショック大賞』なんですけど、これ新しい本です。もともとは『通販生活』のミニマガジン『益軒さん』の企画なんですよ。
しんしん:
見てみよう。
QUIM:
「益軒さん」って、貝原益軒の「益軒」ですね。『養生訓』の。だから、ある意味、医学の話でもあるんですよ。何かというと、皆さんが自分の「老いるショック」を投稿して、そこにみうらじゅんさんがコメントしていく。まあ、それだけの本なんです(笑)。
小倉:
なんかカテゴリ分けされてるんですか? 病気みたいに分類されてるとか。
QUIM:
いや、そんなにカテゴリ化されてなくて、ひたすら、すごい量が載っている感じ。思った以上にたくさん紹介されていて。あと、字がでかい(笑)。ご高齢の方向けだから、字が一個一個大きいし、全部太字なんですよね。そこまで配慮されているんですよ。
ほら、ここに書いてあります。
本書は出来る限り大きな活字で打ってくださいと、担当編集者にはお伝えしてあるんですが、これでもダメなら我々『ローガンズ』の仲間入り。
陽気に、
「老い~~るショック!!!」と、叫んで下さいね。
って。いいですよね(笑)。で、本当に皆さんの「老いるショック」が延々と載っている。通販生活を読んでいる、いろんなご年輩の方々からの投稿ですね。でも、この企画自体がすごいと思うんですよ。
しんしん:
すごいよね。めちゃくちゃ集まったんでしょうね。
QUIM:
そうそう。しかも、載った方には、いろんなオイルをプレゼントするっていう(笑)。オリーブオイルとか、えごま油とか。それは編集部が考えたみたいですけど。でも、この「老いるショック募集します!」っていう企画設計自体が天才的なんですよ。みんな応募したくなる。
しんしん:
読んでいて面白いですよね。私、子どもと一緒に読んでいて、「どれが面白いかな」って話していたんですけど。うちはまだ小学生なので、全部は伝わらないんですよ。「何それ?」ってなるものもある。でも、子どもが見ても、ちょっとクスッとする話もあって。……本当は私も面白かった箇所を紹介しようと思ったんですけど、本、家に置いてきちゃったんですよね(笑)。
●歳をとるって悪くないじゃん?
QUIM:
じゃあ、僕の方で。これ、面白かったやつ。
『遊びに来た友人にコーヒーを淹れて、何故かそのコーヒーを仏壇に供えていた。催促されるまで全く気がつか
なかった』
それに対するみうらじゅんさんのコメントがまたいい。
もしやその後、仏壇に供えたコーヒーを御友人に出されたんじゃ?ま、催促された方も仏様からのお下りコーヒーだと、有り難く、一滴も残さず飲み切らなきゃなんないですものね。
……優しいんですよ。責めないんですよ。僕も40になりましたけど、なんか、歳取るって悪いことじゃない気がしてくる。そうそう、今日、誕生日なんですよ。
小倉:
お誕生日おめでとうございます。
QUIM:
ありがとうございます。生誕40周年です。そして今日は、マイルス・デイヴィス生誕100年!
しんしん:
マイルス・デイヴィスと同じ誕生日なんですね。
QUIM:
そうなんです(笑)。Tシャツもマイルスです。一緒に祝ってるんです、誰も気づかないですが。100年と40年。ちょうど60年差。
●病院のスリッパを履いたまま、家まで気づかず帰ってきた
QUIM:
まだまだいろいろあるんですよ。
「冷蔵庫を開けて、もうすぐ無くなるなと買ってきたマヨネーズ、ワサビ、ポン酢。ストック用の引出しに同じものがいくつもある』
小倉:
あるあるだよね(笑)。
しんしん:
それに近いので、電子レンジのやつもありましたよね。電子レンジでチンして、そのまま忘れて、後で気づく……みたいな。
小倉:
きっと「チン♪」の音が聞こえなくなったとか(笑)。
QUIM:
結構もう普通に日常でもありますよね。あとこれ、「病院のスリッパを履いたまま、家まで気づかず帰ってきた」っていう。
小倉:
ああー、分かる(笑)。
QUIM:
分かりますよね。やったことはないけど、途中まで何かのまま出ちゃった、みたいなのはある。
あと、こういうのもある。「食後、歯磨きをしたかどうか分からなくなる時がある」それで「歯ブラシの湿り具合を確かめる」みたいな。
しんしん:
その最後の一言がいいですよね(笑)。「やるなあ」って思って。
QUIM:
これも良かった。「寝転がってテレビを見ていただけなのに、『変顔しないで』と家族に笑われた。」それで「ガラスに映った自分を見たら、くっきりほうれい線に、二重アゴ。本当に変な顔だった」(笑)。このイラストの絵がまたいいんですよ。
こういったことを全部、みうらじゅんさんが受け止めて、コメントしていく。まあ、本当に、それだけの本なんですが(笑)。でも、たまにはこういう本を紹介するのもいいですよね。じゃあ、今日はちょっと短めで。ありがとうございました。
しんしん:
ありがとうございました。
小倉:
ありがとうございました。
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投稿者プロフィール

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メディアのプロとして、立ち上げから今日に至るまでMEdit Labの運営を
全面的にサポートしてくれているSaiQuicのエディター。20代から伝説の編集者、故・松岡正剛にその才能を見出され、数々の松岡プロジェクトに参加してきた。大学時代は勅使川原三郎ゼミに所属し、ダンサーやモデルや役者もできちゃうマルチタレント。
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