おしゃべり病理医のMEditラジオ COLUMN
MEditLabのポッドキャスト番組「てゆーか医学」の第15回放送は、「ゆるっとMEdit」、通称「ゆるメディ」をお届けします。
前回は、「なぜ医学部でゲームづくりをするのか?」をテーマに、編集工学やゲームデザインの視点から、MEditLabが大切にしている「学び方を学ぶ」という考え方について語りました。
今回は、その実践編。MEditLabが初めて挑戦した、日本最大級のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」への出展を振り返ります。
病理診断をバナナで体験するカードゲーム『バナオーマ/アデノーマ』は、果たして何人の手に渡ったのか。そして、数え切れないほどのゲームに触れる中で見えてきたのは、「面白いゲーム」と「つまらないゲーム」の決定的な違いでした。
おしゃべりの内容は、
・「ゲームマーケット」デビューしました@幕張メッセ
・バナナで病理診断するカードゲーム 「バナオーマ/アデノーマ」を売ってきました
・シェイクスピアも「走れメロス」もカードゲームになる
・「面白くない」から学ぶこともある
・「ポクポクポクチン」にダイ嫉妬
・「なんで、つまらないんだろう」と必死に考える
・「正しさ」とゲームづくりの難しさ
・ジャクソン5ならぬ「ジャクソン4(フォー)」? 配信中にいきなりテストプレイ!
などなど。
「正しいゲーム」は、必ずしも面白いゲームではない。
逆に、「つまらないゲーム」にこそ、ゲームデザインを学ぶヒントが詰まっている。
医学をテーマにするからこそ避けて通れない「正しさ」と、ゲームとして人を惹きつける「面白さ」。そのあいだで試行錯誤しながら、MEditLabは今日もゲームをつくっています。
ゲームマーケットでの発見から、収録中に突然始まるマイケル・ジャクソン風ゲーム「ジャクソン4(フォー)」のテストプレイまで。今回も、医学、ゲーム、編集、そして謎の“マイケルっぽさ”が入り混じる回になりました。
それでは、ごゆるりとお楽しみください。
▼その他配信先
・Apple Podcasts:https://x.gd/LUfXT
・Amazon Music:https://x.gd/IArL6
・YouTube:https://youtu.be/LugicabIrXs
▼チャプター
・「ゲームマーケット」デビューしました@幕張メッセ
・バナナで病理診断するカードゲーム 「バナオーマ/アデノーマ」を売ってきました
・シェイクスピアも「走れメロス」もカードゲームになる
・「面白くない」から学ぶこともある
・「ポクポクポクチン」にダイ嫉妬
・「なんで、つまらないんだろう」と必死に考える
・「正しさ」とゲームづくりの難しさ
・ジャクソン5ならぬ「ジャクソン4(フォー)」? 配信中にいきなりテストプレイ!
▼全文公開
●「ゲームマーケット」デビューしました@幕張メッセ
QUIM:
順天堂大学STEAM教育研究会、MEdit Labがお届けするPodcast番組「てゆーか医学」、今日も始まります。よろしくお願いします。私、QUIMと。
小倉:
おしゃべり病理医の小倉加奈子です。よろしくお願いします。今日は「ゆるっとMEdit」、ゆるメディでございます。前回、MEdit Labでなぜゲームづくりをしているのかという話を、だいぶ熱く語らせていただいたんですけれども、まだちょっと続きがあるので、続けてもいいですか?
QUIM:
どうぞお願いします。
小倉:
しつこいよって感じかもしれないですけど(笑)。MEdit Labは2022年に発足して、ゲームづくりも3年ぐらいやってきたんですね。私たちもそうですし、参加者さんもすごく頑張ってくれて、高校生とかが結構いいゲームを作ってきてくれているんです。
そういう成果がだんだん出てきたところで、実は私たち、5月にゲームマーケットにデビューしてきました。ゲームマーケットをご存じない方に、ちょっと説明したほうがいいかなと思うんですけど。
QUIM:
そうですね。知らない人も多いかもしれないですね。
小倉:
ゲームマーケットというのは、電源不要ゲーム、つまり、いわゆるアナログゲームを対象にした有料のゲームイベントです。入るときに入場料がかかるイベントですね。
東京では春と秋の年2回開催されていて、第1回は2000年4月に開催されたそうです。最近は幕張メッセで開催されていて、私とQUIM君も2年ぐらい前に、出展側ではなく、お客さんとして行ってみたことがありましたよね。
QUIM:
行きました。僕もそのときはビッグサイトだったと思うんですけど。
小倉:
そうそう。今はビッグサイトの改修工事が入るのか、会場側の事情があるのか、最近は幕張メッセで開催されていて。ちょっと遠いんですけど、でもすごく大きいんですよ。
私たちも出展料を支払うと出展できて、小さい机と椅子がいくつか用意されて、そこにブースを出すという形です。基本的にはアナログゲームを売る。付随して、ちょっとしたグッズや本を売ってもOK、みたいな感じで、そんなに厳しい出展ルールがあるわけではないんです。
そこで私たちは、ゲームを売ってきました。ただ、全く勝手がわからなくて、私たちのブースは非常に地味だったような気がします(笑)。
でも、QUIM君と佐伯さんが作ってくださったMEdit Labのポスターがあったので、それを貼って。ほかの出展チームは、のぼりを用意していたり、後ろにドーンと横長のポスターを貼っていたりしていて、気合いが全然違ったんですけど。
私たちは全然わからなかったので、お二人に作っていただいた小さめのポスターをあちこちに貼りまくって、なんとか雰囲気をよくして、という感じでやってきました。
で、何を売ってきたかというと、「バナオーマ/アデノーマ」というゲームです。
●バナナで病理診断するカードゲーム 「バナオーマ/アデノーマ」を売ってきました
小倉:
私たちが最初に作ったゲーム「MEditウイルスバトル」は、STEAMライブラリー事業のときに作ったゲームです。その後、本格的にMEdit Labでゲームづくりを始めてから、最初に完成したゲームが「バナオーマ/アデノーマ」なんですよね。
もともと私は、「バナナの病理診断」というワークをやっていたんです。バナナの成熟度合いを見た目でジャッジしていく。病理医がやっている診断の疑似体験を、バナナでしてもらう、というコンセプトです。
すごく青っぽくて、まだ硬そうな未熟なバナナから、真っ黒でゴミ箱行きになりそうなバナナまで、14段階のバナナの写真がカードになっています。それを使ったゲームです。
QUIM:
バナナを置いておくと、だんだん黒くなっていきますからね。
小倉:
そうそう。その過程がカードで見えるんです。
ルールは本当に簡単です。学校の授業などでやるときは、5、6人のグループになってもらって、1人1枚ずつカードを配ります。自分だけが自分のカードを見ることができる。
そして、自分のカードのバナナの熟し具合を、言葉だけで説明するんです。6人なら6人で協力して、成熟度順に並べていく。なおかつ、一応「診断名」もつけます。
未熟なバナナは「バノン」。食べごろは、そのまま「バナナ」。もう腐って食べられないよ、というものは「バナオーマ」。
さらにセットで、実際に私たちが顕微鏡で観察している大腸腫瘍、大腸がんから良性の大腸粘膜までの写真も、14段階で用意しています。それが「アデノーマ」のほうです。もともとは「バナオーマ」だけだったんですよね。
QUIM:
そうそう。最初はバナナだけでカードゲームを作っていました。
小倉:
でも、せっかくだから、私たちが実際の診療で観察している大腸腫瘍の顕微鏡写真も載せると、結構シュールというか、バナナとのコントラストもある。それで「バナオーマ/アデノーマ」というネーミングにして売り出しました。
●35個売れました! 初日来場者は1万8000人
小倉:
おかげさまで、35個ぐらい売れました。全く宣伝していなかったんですけどね。でもゲームマーケットは2日間、本当にものすごい盛況で、初日は1万8000人ぐらい来ていたんだそうです。
そうすると、「それで35個ってね……」という感じもあるんですけど(笑)。でも本当に全く宣伝していなかったので。
「いらっしゃいませ」みたいなことも、なかなか言いづらいんですよね。道行く人が「何これ?」と目を止めてくださると、「遊んでいきませんか?」と声をかける。
QUIM:
ちゃんとお客さんを呼び込んで。
小倉:
そうです。「どうですか?」「大腸腫瘍をテーマにしたゲームです」「順天堂大学です」みたいなことを言いながら。慣れない売り子で、すごく疲れました。
でも、土曜日と日曜日で結構客層が違ったんです。土曜日は本当にゲーマーというか、ゲームが好きな方たちが多い。
QUIM:
愛好家が初日ってことですね。
小倉:
初日は、予約されている方も多いと思うんです。お目当てのゲームがあって、それを狙って来ている。ハンターみたいな目をした人たちが来るんですよ。
QUIM:
次の日にはもうないかもしれないし。
小倉:
そう。まず買っちゃうんですよね。早期入場という枠があって、11時から入れるんです。普通より入場料を多めに払っている人たちが入ってくる。その方たちはたぶん、すごく人気のある希少性の高いゲームを予約しているか、あるいはそこに並びに行く。
だから、私たちのブースには見向きもせず、目的のブースへバーッと行くんです。
QUIM:
米光さんのゲームとか、予約で完売なんでしたっけ?
小倉:
予約というか、受注生産にしていて、もう予約で終わっていたんですよね。でも米光さんもすごく心配してくださって。私は初出展だからって、様子を何度も見に来てくださって、本当にお父さんみたいに見守ってくださいました。
たぶん、そういう方たちは、一番欲しいゲームをゲットしたあとに、掘り出し物を探す感じで会場を回るんです。そのときに、目ざとく私たちのゲームを見つけてくださると、「面白いね」「テーマが何これ?」となる。しかも1200円。
QUIM:
めっちゃ安いじゃん、という。
小倉:
そうそう。
QUIM:
財布の紐が緩いというか、さっと買っていってくださる。標準より安いんですよね、たぶん。
小倉:
そうだと思います。
QUIM:
テーマ的にも珍しいしね。実際に出展すると、アナログゲーム市場の取材にもなりますね。行ってみないとわからないことがある。
小倉:
そうなんです。取材というので思い出しましたけど、いろいろな会社の方も来ていて。商談まではいかないけれど、名刺交換をすることもありました。展示即売会的な雰囲気ですね。インディーズのゲームがバーッと並んでいて。
●シェイクスピアも「走れメロス」もカードゲームになる
小倉:
日曜日は4人体制で、しんしんと私と、私の主人と、医学生のユッキーでお店をやっていました。順番に「ちょっと見てきます」と言って、自分たちもゲームを買いに行ったんですけど、いろいろなゲームが売っていて、やっぱり面白いんですよ。
インディーズっぽいゲームも買いましたし、すごろくやさんのような大きな会社が出展している企業ブースもありました。企業ブースには、完成度の高いゲームがたくさん売られていて、すごく勉強になりました。
街中で、それだけ一斉にゲームが売られているお店って、なかなかないじゃないですか。だから、「こういうルールなんだ」「こういうデザインで作っているんだ」と見るだけでも、ものすごく勉強になりました。
QUIM君は最近、シェイクスピアを読んだり、映画を見たりしていたので、パッと見つけて買ったのが、「シェイクスピア四大悲劇スピード」というゲームでした。
シェイクスピアって、いろいろな名台詞があるじゃないですか。その名台詞がカードに載っていて、それをスピードのように重ねていく。同じ『リア王』だったら『リア王』の台詞、『オセロー』だったら『オセロー』、『マクベス』だったら『マクベス』の台詞を重ねていく、というスピードゲームらしいんです。

小倉:
このシリーズには、「現代文学スピード」というものもあって、『走れメロス』『羅生門』『注文の多い料理店』『こころ』を素早く分ける、という日本文学のゲームです。これは「勉ゲー」というところが作っていて。
実は私たちもゲームづくりをしていると、印刷費がどのくらいかかるか、ということも勉強しなくちゃいけないんですよね。
その「勉ゲー」のスピードシリーズは、グラフィックという印刷会社さんの「32枚トレーディングカード印刷」という、格安の印刷サービスを使って作っているそうなんです。カード枚数を32枚に限定する。その仕様の中で、うまくいろいろなテーマを設定して売っている。何十種類も作っているんです。
QUIM:
予算もあるから、企画をひとつのルールというか、決まりにして、枚数などを決めて作っていくことは必要ですよね。
小倉:
そうなんです。
QUIM:
商業的に作るとなると、予算がありますからね。その範囲内でどう作っていくのか、ということですよね。
●印刷会社のブースで、商品化の現実を知る
小倉:
ゲームマーケットには、萬印堂さんとか、JELLY JELLY PRINTさんのような、ゲームを専門に扱ってくださる印刷会社さんも出展していました。
そういうブースでは、サンプル品を見せてもらったり、持ち帰ったりできます。「この化粧箱で、このぐらいの枚数だったら、このぐらいの印刷費がかかりますよ」という相談ができるブースもあるし、資料やサンプル品が置いてあるところもありました。コマを作るのも、結構高いんですよね。
QUIM:
コマね。
小倉:
だから、初めてゲームマーケットに参加して、買う側も売る側も両方体験できて、とても勉強になりました。
ゲームマーケットよりはずっと小さな会ですけど、そういうところにも、せっかくだから出展してみようかなと思っています。
QUIM:
なるほど。いろいろ展開していっているんですね。
小倉:
そうですね。勉強することはいくらでもあるという感じですし、いろいろな方の意見を聞いたり、見ていただいたりすることで、つながりもできていきます。
せっかくだから、商品化することも積極的に考えたいなと思っています。そこにはまた別のハードルや難しさがあるんですけど。でも、ワークショップに参加している高校生や大学生にとっても、自分が作った自作ゲームが商品になるというのは、ちょっと夢じゃないですか。そういう事例も見せてあげたいという気持ちが、すごくあります。
QUIM:
たしかに、ものづくりのハードルはいろいろ下がっていますからね。ゲームもそうです。デジタルゲームだって、今はAIを使えば作れてしまう可能性がありますし。
小倉:
本当にそうです。前回、システム思考の話で、「見方」と「境界」の設定が重要だという話をしましたけど、それはゲームづくりにも通じると思うんです。
どういうふうにテーマを切り出すか。どういう見方でゲームを作るか。それがすごく大事な時代になっている。アイデアがあれば、簡単に形にできてしまう時代でもあるからこそ、どういうアイデアにするかが、すごく大事な気がします。
●「面白くない」から学ぶこともある
QUIM:
ゲームづくりで一番の肝だけど、「面白いってなんだろう」というのは、すごく大変ですよね。
小倉:
それはすごく大変です。つまらないゲームはいっぱいありますから。
QUIM:
つまらないゲームというのは、たぶんいっぱい作れるんですよね。
小倉:
でも私、つまらないゲームをやってみることは大事だと思いました。
QUIM:
それはすごく大事ですね。
小倉:
つい先日の日曜日に、MEditカフェで、みんなでゲームマーケットで買ったゲームをいろいろ持ち寄って遊んでみたんです。どのゲームとは言えないけれど、「全然面白くない」というゲームも、やっぱりあって。
でも、それを「面白くなかった」で終わらせるのは、ちょっと芸のないことだから。どうやったら面白くなりそうか。どうすればもっとよくなるのか。作者がいれば、愛のあるフィードバックになるんですけど、その場には作者がいなかったので、「全然面白くなかったね」とボロッと出てしまう。
でも、なんで面白くなかったんだろう、こういう点が面白くない、こうすればもっとよくなる、という話は結構したんです。だから、面白くないゲームをやることは、それはそれですごく学ぶことが多いなと思いました。
QUIM:
本当にそう思います。
小倉:
一方で、すごく斬新なゲームもありました。これもグラフィックの32枚カードの安い仕様で作られたゲームだったんですけど、編集者の石神さんが、たまたま見つけたと言って持ってきてくださったゲームです。
●「ポクポクポクチン」にダイ嫉妬
小倉:
「お焼香カンニングゲーム」みたいなものなんです。

QUIM:
木魚みたいな。
小倉:
そうそう。お焼香するとき、何回こうするんだっけ、ということがあるじゃないですか。毎回、前の人を見るんですよね。
QUIM:
そう。忘れちゃうから。
小倉:
みんな、前の人をカンニングするじゃないですか。そういう心理的な体験、みんなが持っている体験を再現しているゲームなんです。
7人が縦に並びます。1列目の人の前に机が置いてあって、その上にカードが裏向きで置いてある。1人目の人はカードをめくって、そこに載っているポーズをするんです。両手でピースをするとか、鬼みたいに角を生やすとか、本当に簡単なポーズが載っています。
1人目の人がそのポーズをする。2人目の人は、自分のカードをめくって、まず1人目の人のポーズをしたうえで、自分のポーズをする。7人目になると、前の6人のポーズを全部したうえで、自分のポーズもしなくちゃいけない。だから、後ろの列になるほど難しくなるゲームなんです。
でも、単に勝ち負けがあるわけじゃない。それ自体が面白いんです。しかもBGMが用意されていて、「ポクポク、チーン」という音が流れるんです。QRコードを読み取ると音源が流れて、そのリズムに合わせて、「チーン」のところでポーズを取る。
1人目は「ポクポク、チーン」なんだけど、2人目は「ポクポク、チンチーン」となっていく。7人目になると、「チン」が7個続くんです。
QUIM:
なるほど。
小倉:
ジェスチャーをして、単に笑うというゲームなんですけど、カードをめくる手の動きがお焼香とちょっと似ているし、なんかクスッとなるんです。
QUIM:
世界観が独特ですよね。
小倉:
若干、不謹慎なのかもしれないけれども、すごいんです。ルールは簡単なのに、みんなでワイワイできる。正面からスマホで動画を撮って、あとで見返して大笑いする、みたいなこともできる。パーティーなどでやるには、すごく面白いんじゃないかと思いました。
QUIM:
学校でやるのはちょっとあれかもしれないけど、子どもも楽しいでしょうね。
小倉:
絶対楽しいと思います。子どものほうが全然できないし、すぐ忘れちゃうから。
結局それも、テーマの切り出し方なんですよね。ルール自体は、ほとんどメモリーゲーム的なものです。
QUIM:
でも、お焼香の世界観が取り除かれると、ちょっと違いますよね。音楽も含めて、組み合わせの妙というか。
小倉:
そうなんです。こういうゲームには、ちょっと嫉妬を感じました。
QUIM:
なんでこういうことを思いつかないんだろう、という。
小倉:
そういうセンスですよね。繊細さというか。
●「なんで、つまらないんだろう」と必死に考える
QUIM:
ゲームに限らず、映画も大量に見ていると、つまらないものが結構あるんですよ。そのときに、「なんでこんなにつまらないんだろう」と必死に考えるんです。
だって、映画の場合は大予算をかけて、絶対に面白くしてやろうと思って作っているに決まっているじゃないですか。ゲームだってそうです。それが、僕にとっては、ということでもあるんだけど、「なんでこんなにつまらないのかな」と考える。
面白いものって、なんかすっきりしちゃうんですよね。この前のしんしんの回でも、「楽しすぎて覚えてない」みたいな話になったけど、面白いと、意外と残らない。つまらないとか、悲しいとか、不快だとか、そっちのほうが残って、次につながることがある。面白いものは、何が面白いのかわからないんですよね、もはや。
小倉:
映画で、見たあとに不快だったという経験はある?
QUIM:
ありますね。不快な映画ということで出ている作品もあるから、そういう演出としての不快さもあるんですけど。
でも、特に最近だと、女性やマイノリティの見せ方とか、役割とか、そういうところに配慮が足りていないと感じることとかあります。あえてやっている場合ももちろんあるけれど、あえてやっていないのかな、というところは、確かに不謹慎に感じるというか、ちょっと引っかかりますよね。
小倉:
米光さんは、そこをすごく気にされて作っているゲーム作家さんだなと思うんです。プレイヤーがどういう気持ちになるか。それは、山本貴光さんも同じかな。プレイヤーがどういう気持ちになってほしいかを、すごく意識してゲームを作っているとおっしゃっていました。
●「正しさ」とゲームづくりの難しさ
小倉:
私たちが医学ゲームを作るにあたっては、編集者の石神さんにもすごく言われたんです。医学ゲームで、「この辺でいいの?」ということは難しいよね、と。
たとえば、多職種連携のゲームを作っていたときのことです。面白いゲームにしようと思うあまり、邪魔要素をたくさん作ってしまったんです。なかなかゴールできないようにするための邪魔要素ですね。
でも、それをプレイしていた石神さんが、「これ、全然患者さんが退院できないじゃん」と言ったんです。お互いに足を引っ張り合って、自分の患者さんがなかなか退院できない。そんなのよくないじゃん、と。
医学ゲームである以上、患者さんを早く退院させるというか、適切な医療スタッフを集めて、適切なタイミングで治療して、早く退院させるのがいいはずなのに、このゲームはそうなっていない。いくらゲームの世界だからといっても、このテーマで、患者さんを退院させることを邪魔するゲームなんてよくない。
そう言われて、ドーンときました。
QUIM:
作っているときに、そこが抜けちゃうこともありますよね。
医学とゲームって難しいなと思うのは、医学とゲームというだけで、不謹慎と言われやすいんですよ。医学のデザインでも思うんですけど、言葉遣いとか、正しさが求められる感じがあります。
そこはいつも思います。だから、ちょっとストップしてしまうというか、「これ以上はやらないほうがいいかな」と思ってしまうところがある。だからこそ、やったほうがいい部分もあるんですけど。
医学は、生き死にともどうしても関わってくるので、そこはかなり難しいなと思います。
小倉:
今も別のゲームをみんなで作っている途中なんですけど、やっぱりそこはひとつのネックですね。
●ジャクソン5ならぬ「ジャクソン4(フォー)」? 配信中にテストプレイ!
QUIM:
ここでちょっと、思いつきのテストプレイをさせてもらっていいですか。
最近、マイケル・ジャクソンをまた聴き直しているんです。マイケル・ジャクソンの映画の話もあって、ジャクソン5の頃から、マイケルが自立していく頃、たぶん『BAD』の頃、日本にも来ていた時期までのことを思い出していて。
僕が初めて行ったライブが、マイケル・ジャクソンなんですよ。
小倉:
すごいですね。
QUIM:
ほぼ覚えていないんですけど。2歳とかだったと思うので。父がなかなか変わった人で、ピンク・フロイドとかにも連れていかれていたんです。
マイケル・ジャクソンは2回来日していて、6歳のときにも行ったんです。そのときは、マイケルがバーンと出てきた最初のところだけ覚えているんですよ。「うわー!」と思った記憶がある。そういう思い出もあって、最近またマイケルを聴き直しているんです。
で、小倉さんとゲームの話をしていたこともあって、「これ、ゲームになるんじゃないか」と思ったんです。
さっき小倉さんに、マイケルの曲を聴いてもらいましたよね。「Don’t Stop ’Til You Get Enough」。日本語だと「今夜はドント・ストップ」という曲です。
あの曲の最初に、マイケルがしゃべっているようなところがあって、イントロが始まるところで「Woo!」って言うじゃないですか。歌詞を見ると「Woo!」って書いてある。あれを使うゲームです。
「ジャクソン4(フォー)」です。ジャクソン5のパロディで。
小倉:
ジャクソン4(笑)。
QUIM:
4人ぐらいでやる協力ゲームです。別に戦うわけじゃなくて、みんなで協力して、その「フォー!」をちゃんと言えるか、というゲーム。できるかな。準備なしでやるから。
小倉:
どういうルール? いつ「フォー」って言えばいいの?
QUIM:
僕が「言って」と言ったら言う、という感じで。あの感じを思い出して、本気でやってください。
小倉:
フォー!
QUIM:
う〜ん…違うな(笑)。なんかちょっと違う。
小倉:
えっ、どういう「フォー」だっけ?
QUIM:
フォーー(笑)。僕、いま意外とうまくできましたけど、練習したときは、声が擦れちゃったんですけど。今やったら言えましたね。
その「フォー」を、4人でちゃんと言えたら終了、というゲームです。協力して、言えなかったら、何が違うのかをみんなでアドバイスしながら、ちゃんと言えるようにする。
マイケルって、いろいろ特徴的な仕草があるじゃないですか。普通の人が真似すると笑っちゃうんだけど、マイケルがやるとかっこよくなる。曲によって、特徴的な掛け声や動きがある。それを取り出して、真似してみる。ちゃんと真似してみるゲームです。
ただ、これは商品化できないですよ。マイケルの許可は厳しいと思うので。でも、もし作ろうとするなら、ちゃんと僕に相談してほしい(笑)。
小倉:
「ジャクソン4」ね。
QUIM:
たとえば「今夜はドント・ストップ」のカードが出てきて、「Woo!」を真似するとなったら、みんなでそれをやる。別の曲だったら、別の曲の特徴的な仕草を真似する。
それをやりながら、マイケルのことも知っていく。マイケルには、ジャクソン5からソロになるまでの段階があるんですよね。お父さんが厳しくて、なかなか自立させてくれなかったとか。でも、そこからソロとして出ていく。1枚1枚のアルバムや曲にストーリーがある。その曲のことや、マイケルの来歴を少し知りながら、マイケルのモノマネをするゲームです。
ある種のシリアスゲームです。マイケルを知りたい人のための、マイケル・シリアスゲーム。
小倉:
でもそれ、共感ゲームじゃないですけど、マイケル・ジャクソンの歴史をひもときつつ、そのときのマイケル・ジャクソンの気持ちに寄り添う、みたいなことですよね。
QUIM:
そうそう。ムーンウォークにだって秘話もあるわけです。そういうことも知りながら、動きを真似する。
小倉:
ムーンウォーク、一応できますよ。すっごい練習したんです。昔バレエをやっていたので。マイケル・ジャクソンって、やっぱりすごく鮮烈だから、見ると真似したくなる。
QUIM:
すごい(笑)。変な動きも多いんだけど、マイケルがやるとかっこよくなるのがふしぎ。『THIS IS IT』という、リハーサルをずっと撮っていた映画がありますよね。あれもすごくかっこいいじゃないですか。そういうのは、ちょっとゲームになるかなと思ったんです。
小倉:
これは絶対、恥ずかしがっちゃダメですね。私、今すごく集中して、QUIM君の真似をしました。
QUIM:
僕の真似をしたってダメでしょう(笑)。僕はマイケルの感じでやったんですけど、そこはまだ課題ですね。
小倉:
じゃあ今度、QUIM君が作ってMEditカフェに持ってきてください。
QUIM:
いや、これは権利的にちょっと……。
小倉:
中でやるぶんにはね。
QUIM:
そういうことですね。
小倉:
はい。ありがとうございました。
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投稿者プロフィール

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メディアのプロとして、立ち上げから今日に至るまでMEdit Labの運営を
全面的にサポートしてくれているSaiQuicのエディター。20代から伝説の編集者、故・松岡正剛にその才能を見出され、数々の松岡プロジェクトに参加してきた。大学時代は勅使川原三郎ゼミに所属し、ダンサーやモデルや役者もできちゃうマルチタレント。
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